
元々倉庫や工場だった建物を使っていることも多いボルダリングジムにとって、毎年やってくる「真夏の灼熱地獄」は本当に本当につらいですよね。
この記事を書いている今現在も、外気温は38℃を超えています。
私の働いているジムは、元々倉庫として使われていた物件。築年数もかなり古く、壁も屋根も断熱材は無し。
夏は熱されたフライパン状態で、とにかく暑い!というより熱い!
ジムのオープンは、一番日差しの強い午後早い時間。
エアコンを低い設定温度にしてガンガンにしてもまったく効かず、真夏はずっと「外気温よりほんの少しマシ」という程度にしかなりませんでした。
なのに電気代は悲しいほどかかってしまう…。
毎年毎年対策を重ね、少しずつは改善していたものの、いまひとつ「これ!」という決定打には欠けていました。
そんな中ついに、「これは導入して正解!」と感じたモノにたどり着きました!
それは、建築素材の遮熱シートです。
電気使用量も今のところ前年とそう変わらないのに、ジムの中がかなり快適になりました。
どんなシートか、どんな風に使っているか、この記事でご紹介しようと思います。
DIYの簡易的な対策ですので皆さんに合うものではないかもしれませんが、毎年の猛暑の中、同じように悩んでいるジムオーナーさんや倉庫物件の暑さ対策で悩んでいらっしゃる方にとって、一つの案として参考になればと思います
実はこの使い方は、ご紹介する資材の推奨の使い方ではありません。耐火性能も無いです。
もし使用される場合は自己責任でお願いします。
それでももしかしたら、藁をもつかむ思いのジムオーナーさんのどなたかの助けになるかもしれません。
少なくとも私たちにとっては、今までで一番「買ってよかった!」と思えるものでした。
メーカー各社様には、大げさではなく、毎年誰かが熱中症になるんじゃないかと心配なところを救ってもらったという感謝の念でいっぱいです。
灼熱のジム、これまでの暑さ対策

元倉庫だった建物は、断熱材も無く、鉄骨に薄い壁と屋根が付いているだけ。
真夏にはその躯体が太陽でジリジリ熱せられ、ジムは地獄のような熱気に。
大型の業務用とはいえエアコンは一台、「登っていくと、熱気の層に頭を突っ込んでいくね」と皆さんに言われてきました。
「いやいや、スポーツは暑い中でやるもんですよ!日陰なだけでありがたいです!」と言ってくださるまるで神様のような会員の皆さんに支えられ、何とか過ごしてきていますが、一日中ジムにいるスタッフの私たち自身も熱中症寸前の毎日を送ってきました。
登りにやってくる子どもたちも、登っているうちにどんどん真っ赤な顔に。
天井高最大5m超、だだっぴろい建物、しかも賃貸物件。
全面に断熱材を入れるような金銭的余裕などあるわけもなく、また解約時の原状復帰のことも考慮する中で、何とか少しずつ自分たちでできる範囲の対策をしてきたわけですが…
まずは、今までやってきた対策を書き出してみます。
ちなみに、弱小ジムですので、「エアコンの増設」という対策は経済的に不可能です…。
- スポットクーラー
風の吹き出し口は涼しいけど、排気を上手に外に逃がさないと排気口から熱い空気が出てきます。
ダクトで屋外に逃がすようにしたけど、湿度が上がって不快感増…そして当然、電気代も相当アップ。 - 冷風機
35℃以上の中では驚くほど効果無し!扇風機のほうが風が強い分まだ良いかも…。しかも電気代も↑。 - 遮光遮熱ネット(農業用)・遮光カーテン
窓という窓、できる限りの壁(外側)に張り巡らせました。
今までよりは確実に効果あったけど、これだけで決定打となるほどではありませんでした。屋根の上に空間を空けてかけられたらもっと良いのかもしれないけど、…さすがにそれは不可能…。 - 屋根散水
屋根に散水した直後の屋内は爽やか!その一瞬は本当に気持ち良い!
でもホース散水で水の届く範囲には限界があるし、一瞬で乾いてしまい持続性無し。屋根にタイマーで自動散水の装置も自作したけれど…水道代のことも考えてしまい少しずつしか散水しなかったため、効果は限定的。 - アルミシート
100均やホームセンターで売っている断熱アルミシートを、壁や天井などの一部に貼ってみました。
無いよりは全然良くなりましたが、やっぱりまだ相当熱気はこもっていました。
こんな感じで毎年細々と、DIYでできる範囲で対策してきました。
広さがあって屋根も高く断熱も無い建物、DIYでやるには、まあこのあたりが限界なのかな…と思っていました。
救世主現る!「遮熱シート」
そして、ついにたどり着いた建築資材の遮熱シート。
これが大正解でした!
壁などの下地に使う透湿・防水シートに銀色の「遮熱」機能が付いたもの。
薄いスポンジのような断熱が層のあるタイプではなく、不織布でできた、うすーいペラペラの紙のように見えるシートです。
いくつかの大型ホームセンターを回りましたが、同じタイプのものは売っていませんでした。
調べたところ、基本的にはネットで買うしかないようです。
これをいろんなところにできる限り貼っただけで、本当にグーーーンと快適になりました!!
救世主!!
酷暑の中、同じ電気代を払うにしても、
昨シーズンはエアコンを回しても回しても涼しくならなかった → 今シーズンはある程度ちゃんと涼しい!
という感じ。
しかも、例えばまだ屋根や壁の一部にシートを貼っていない部分があってこれなので、もっと貼れればそれだけ効果はアップしそうです。
いや、アップします。割と自信を持って断言できるかもしれない。
正直なところ、遮熱っていっても、屋内に貼ればいったん屋内側には熱が入ってきているわけで、鉄骨や屋根材・壁材は今まで通り熱を持っちゃうだろうし、そんなすごい効果は期待できないだろうな…と思ってたんです。本来は建物の外側にプロがきっちり施工するものだし。
でも、良い意味で完全に予想を裏切られました。
断熱シートや遮熱カーテンをしてもほんのり熱を感じてしまっていた部分も、驚くほど熱を感じなくなりました。
ペラペラの薄さなのになあー。
どう使う?効果は?
本来は外壁用の建築資材で、屋外側の建材の下地として使うものとのことですが、壁や天井の、特に直に日光や外気の当たる面の屋内側に、銀色の面を外側(躯体側)に向けるようにしてできる限り貼ってみました。銀色面で熱を外に向けて跳ね返し、白い面が屋内側を向く感じです。
全てピッチリと隙間なく貼ったわけではなく、後ではがせる強力両面テープを使ったりしながら、壁などの手の届く範囲に簡易的に貼っただけ。隙間も全然あるし、かなりラフに貼っています。
まず最初に、天井の一部にはしごを使って貼りました。
これは、5m高の天井にはしごをかけて作業できるスタッフがいてこそのことではありますが。
それだけでもかなりの効果を実感したので、翌シーズンにはさらに買い足し、天井の中心部からのほとんどと、壁にもできる限りペタペタ貼り付けました。
まだ貼れていない部分もたくさん残っていますが、貼った面積が増えれば増えるほど、効果の体感が大きくなっていきます。
後述のエアコンタイマー効果ももちろんありますが、本当にありがたいことに、対策前よりエアコンの設定温度控えめ稼働なのに、3~5℃は室温が低くなっています。
「遮光」と違うのは、「遮熱」は壁や屋根など光は完全に遮断されている部分にも有効なこと。
たとえば太陽光の無い夜間や、暑い部屋に接した壁面などでも、単純に外部の“熱”を跳ね返してくれているようです。
正直言って見た目は「白い紙を貼っている」という感じにはなってしまいますが、灼熱地獄から解放されるなら、そんなことくらいなんてことない!
どうしても見た目が悪くて困るなら、その上から板を張るなり布を張るなりして隠すようにしたらいいと思います。
1m巾×50mのロールで1万3千円~くらい。1ロールでもかなりの面積をカバーできます。
うちはなんだかんだいろいろなところに貼りまくったので、少しずつ買い足していって4~5本くらい使ったかな?
もちろんそれだけの出費はありましたが、これは一度貼ってしまえば何年も使えそうなので、まったく問題なし、必要経費です。
併用している暑さ対策
「遮熱シートを屋内の壁や天井に貼ること」が暑さ対策のベースですが、ほかの対策も併用しています。
ベースの涼しさが遮熱シート使用によってかなり改善されたことで、ほかの対策もより活きてきました。
エアコンタイマー
最初は、夏はいつもより早めに出勤してエアコンのスイッチを入れ、ガンガンにかけていました。
早めといっても、どう頑張っても1時間か30分いつもより早いくらいで、エアコンのスイッチを入れるのはすでに室温の上がっている正午頃。エアコンは激しく稼働するも涼しくなりきらないまま営業時間に突入、という感じでした。
毎日エアコンのために早出をするのも厳しいな…ということで、前日にタイマーを設定して帰ることに。
ちなみにエアコンをオンにする時間は、今まで早出していた頃の時間帯か、もう少し早いくらい。11時とか11時半くらいですかね。
早出の必要は無くなりましたが、やっぱりエアコンの稼働は激しく、その割には「外よりは全然涼しいよね」という程度。
でもそれでも、今までを思うと全然満足でした。
ここまで、スイッチを入れる時点の設定温度は18℃とか20℃とか。風量も最大にしたりしていました。
そして今シーズン。
遮熱シートをある程度の面積に貼ったこともあり、エアコンの稼働方法を改めて考えてみることに。
私のchatGPTに(笑)、ジムのエアコンの使い方について自分なりの仮説を相談してみました。
…ちなみにchatGPT、めちゃくちゃ便利&有能ですね。私の手書きのメモ程度の建物図も理解してくれました。スゴイ。
それは、「室温の上がりきらない朝のうちの時間から、設定温度高め・風量弱めでタイマー設定して点けておくのはどうか」というもの。
室温が上がってしまって室内の鉄筋や壁、什器などが熱を持ってからガンガンにかけるより、早い時間からうっすら涼しくしておいて出勤してから調整するほうが、稼働時間は長くなるけど結果的に節電になるのでは、そして快適性も高いのでは…と考えました。
一応chatGPTから「その通り!」とのお墨付きをもらったのでそこは信頼して、今シーズンはその稼働方法でやってみています。
設定温度27度、風量弱で9:30頃にオンになるようにタイマー設定。
それで出勤時の正午頃には、わりと涼しめに保つことができています。
その後は外気温や人の多さ、湿気などの様子を見て調整していますが、閉店時まで基本的に25℃~27℃の設定のままで大丈夫。どうしても暑いなっていうときに少し低めに調整するくらいです。
風量も、暑い日中に「自動」にする程度で、基本的には弱でいっています。
さすがに今日のように外気温が37℃や38℃を超えてくると、設定温度を下げたほうが良い時間帯もありますが、それでも25℃か24℃設定でいけましたね。
これは確実に、遮熱シートを貼ったおかげ。
貼ってない時にこのエアコンの使い方をしていたら、多分エアコンの力より強烈な太陽熱で躯体が熱せられる力のほうが大きく、電気量を食うばかりで効果が弱かったんじゃないかなと思います。比較をしていないので、あくまで予想ではありますが。
ちなみに「弱と自動、どちらが節電になるのか?」という疑問もchatGPTにぶつけてみました。
「ひろーい気密性ゼロの空間でエアコンが1台だけという条件下だと、タイマーで自動にするとずっと強い風量で動き続けてしまうのではないか?」ということと合わせて投げかけてみたのですが、chatGPT曰く「その通り!」という回答でした。
「狭い空間」「気密性の良い空間」「エアコンの能力が空間に対して高い場合」などは自動運転のほうが節電に繋がりやすいようですが、うちのジムのように「広くて気密性が無く、エアコン性能が空間に対して低い場合」は、自動運転にするとエアコンが長時間頑張り過ぎてしまうため、電力を大きく使ってしまう可能性が高いとのこと。
なので、いったん細く最低限で稼働して躯体が熱くならない程度に涼しくしておき、出勤してから調整する、というやり方にしてみています。
遮光遮熱ネット(農業用)
これは、以前建物の外側に張ったものをそのままにしています。張っているのは農業用のネットなので、意外に風も抜けて台風のような強風にも耐えています。
ただ、素材的にいつかは劣化も考えておかないといけないかな。
屋根・壁への散水
遮熱シート対策をするまでは、暑い日には1日に3~4回散水したり、前述のように自動屋根散水装置をDIYしたりしていました。
今は、暑い日のオープン前の屋根の焼ける時間帯に1回だけ撒いています。気温が35℃を超えたりしなければ、散水せずでも大丈夫。
昨シーズンと比べると水道代が削減できそうです。
サーキュレーター・扇風機・換気扇
これもchatGPTに相談しつつ、良さそうな位置と風量で各所に配置しました。
換気扇は、建物上部の熱い空気だけをなるべく吸い出してくれるよう、簡易的にですができる限り高い位置に付けています。でもこれは建物の造りによって取り付けられない場合もあると思います。うちの物件はたまたま付けられたのでラッキーでした。
昨シーズンまで使っていたスポットクーラーは、今日の38℃超えを無事過ごせたことでもう出番はないかなと思います。冷風機は言うに及ばず。
なので、確実にその分の電気代は削減に繋がるはずです。
うちのジムでは電気はエアコンだけ独立契約しているので、エアコンだけのデータも前年までと比較しやすいのですが、使用電気量はエアコンの稼働時間が大幅に増えた割にそんなに変わらないか、むしろ少なめになっている可能性も。これから38℃超えが頻発すると、さすがにどうなるか分かりませんが。
それでも、ほぼ変わらない使用量で快適さが段違いなのはとても嬉しいです!
まとめ:灼熱のジムや倉庫・工場物件に悩む皆さんへ
広い建物の暑さ対策は「一発で解決!」とはなかなかいきませんが、遮熱シートは想像以上に効果的でした。
もちろん遮熱シート代がかかり作業も手間はかかりましたが、それ以上に間違いなくジムの中が快適になったこと、電気代や水道代の削減に繋がりそうなことに、現時点ではとても満足しています。
自分のジムでうまくいった方法が、近年の猛暑に苦しむどなたかの参考になればうれしいです!
ちなみに知人が飲食店を経営していて、同じように真夏の店内の暑さに悩んでいたのですが、少しこのシートをお裾分けして使ってもらってみたところ、だいぶエアコンの効きが良くなったとのこと。
とても喜ばれました。
昭和中期築の古い家で遮熱対策なんて全くされていない自宅も、できれば至る所に貼りたいくらいです。
ボルダリングジムだけでなく、倉庫、作業場、プレハブなどいろんなところで活用できそうです。